俺たちはタオルで身体を拭いて乾かし、洋服に着替えた。
こうやって事後色々やっていると、ちょっと冷静になってきて、さっきまでしていたことが急に恥ずかしくなってくる。
……い、いや、まて。
冷静になってはいけない。かと言ってエロい興奮を引きずってもいけない。
俺には今日……まだ、やらなければならないことが、あるのだから。
涼太 「渚沙」
渚沙 「うん。あたしも、もう大丈夫よ」
涼太 「いや、ちがくて」
渚沙 「? どうしたの? 真面目な顔して」
涼太 「どう切り出そうか、ずっと迷ってたんだけど、もう格好つけてる場合じゃないなって思って」
涼太 「……今日渚沙をデートに誘ったのはさ、実は俺から大切な話があるからなんだ」
渚沙 「……あ」
渚沙 「う、うん……」
渚沙 「な、なにかしら……大切な、話って」
涼太 「あ、ああ……。ただ、その話の前に、謝っておかないといけないことがあって……」
渚沙 「あ、謝るって……なにを?」
涼太 「実は、昨日の渚沙とりんかの話……俺、隠れて聞いてたんだ」
渚沙 「えっ!?」
渚沙 「き、聞いてた……? あたしと、りんかの話を?」
涼太 「あ、ああ……。その、ごめんなさい」
渚沙 「あたしとりんかの話って……その、どこでしていた……話?」
涼太 「その……二人で、神社でしてた話だ……」
渚沙 「じ、神社で……あたしとりんかがしていた話……」
理解が追い付かないのか、渚沙は目を何度もぱちぱちとしばたいた。
涼太 「は、はい……」
渚沙 「そ、そう……。リョータは、あのときの話、聞いちゃって……」
渚沙 「ま、待って……。聞いてたって、その、どうして……?」
涼太 「家を出る二人が見えて……」
涼太 「なんか、二人とも深刻そうな顔をしてるから、気になって、その……」
渚沙 「つ、付いてきちゃったの……?」
涼太 「……はい」
俺はそこで、深々と頭を下げた。
涼太 「申し訳ない……反省してる」
渚沙 「………………あの話聞いて、リョータがあたしに謝ってるってことは、もしかして」
顔を上げると、渚沙が半泣きになっていた。
涼太 「ちょっ!? 待って! 待ってくれ!! なにを勘違いしてるかわからないけど、渚沙は絶対勘違いしてるから!」
渚沙 「で、でも……あたし、ごめんなさい、されてるのよね……?」
涼太 「違うって! ただ、その、盗み聞きしたことを、謝ってるだけだっ!」
渚沙 「うぅ……ぐす……?」
涼太 「そのっ……盗み聞きしたことは申し訳ないと思ってるんだけど、俺がしたいっていう大切な話はその続きのことで……」
……好き。
勢いがあれば言えてしまうその言葉も、自分がしていることが大切な告白だと思うと、口にするには大きな勇気を必要とした。
涼太 「その……つまり、だな……」
涼太 「俺が言いたいのは……その……」
涼太 「渚沙……。好き、だ」
渚沙 「え……?」
涼太 「その……今更なに言ってんだって思うかもしれないけど、今まで、ちゃんと、俺から言ってなかった気がして……」
渚沙 「え……あの、その……。へ?」
涼太 「勢いとか、流れとか……そういうんじゃなくて、ちゃんと俺の口から、渚沙に告白、したかったんだ」
渚沙 「え? あ、あの……。好きって、つまり、女の子として……?」
涼太 「お、おいおい。俺が言うのもなんだけど、今更なに言ってんだよ、渚沙」
渚沙 「そ、そうだけど……ううん、そうなんだけどぉ……」
涼太 「女の子として、異性として……世界で一番、渚沙のことが、好きなんだ」
渚沙 「ううぅ……あぅ」
2回もエッチを済ませておいて、本当に、俺たちはいったいなんの話をしているんだろう。
とは言え、その責任は俺にある。俺が、渚沙が告白してくれたときに、あんな優柔不断な返事をしたから……。
涼太 「俺たちは、恋人同士だ。“お試し”なんかじゃない」
涼太 「渚沙に告白されたのが、嬉しくて……。可愛い姿を見て、ドキドキして……。さっきも、メロメロだった」
涼太 「好きだ」
涼太 「……渚沙のことが、好きです」
渚沙 「――――――っ!」
渚沙 「……で、でも、りんかの話も、聞いた……のよね? その、神社のあれ……」
涼太 「あ、ああ……」
やっぱり、その話題は避けて通れない、よな……。
だったら、ちゃんと全部言ってしまう方がいい。
涼太 「実は、昔のりんかとのことも……思い出したんだ」
渚沙 「……え!?」
渚沙 「りんかとのことって、その……。あれよね……りんかが、リョータの……」
初恋の人だった、ということ……。
渚沙は言い切らなかった。だけど、そのことを渚沙が言っているのは間違いない。
涼太 「それも、思い出した……」
渚沙 「そ、そっか……。リョータも、思い出してるのね」
涼太 「でもっ! ……それは、記憶を思い出しただけだ」
涼太 「ああ、そういうこともあったなぁ、懐かしいなぁって……。正直、そんな感じだ」
胸は……痛まなかった。
だって、俺にとって一番大切なのは、目の前の渚沙を傷付けないことだったから。
渚沙 「そういう、もの……?」
涼太 「まあ、あの頃の初恋なんて、俺たちくらいの歳になれば、そんなもの、だろ?」
渚沙 「う、うん……そっか」
渚沙は固い表情を崩さないまま、そう言った。その表情から、本当に納得してくれたのかどうかは推し量れなかった。
涼太 「だから……あんまり、不安がらないでほしいんだ」
渚沙 「え……?」
涼太 「俺が好きなのは渚沙だから……どこにも行ったりしないから、だから渚沙にはもっと安心してほしくて」
渚沙 「リョ、リョータ……」
涼太 「渚沙……」
涼太 「俺は、渚沙のことが好きだ」
涼太 「……だからこれからも、恋人として、付き合ってください」
渚沙 「は、はい……。その、喜んで」
渚沙 『そ、その……』
渚沙は少し顔を赤くしながら、“ひみつでんわ”でささやいた。
渚沙 『あたしも、リョータのこと、好き……』
渚沙のそのたった一言で、胸が温かくなった。
もし、渚沙も同じように感じてくれているんだとしたら、やっぱりもっと早くこうするべきだったんだ。
涼太 「ありがとう。……嬉しい」
渚沙 「あ、あたしも……」
渚沙 「ふふっ。……ありがとう、リョータ」
ただ今は、渚沙が笑ってくれている、そのことで良しとしよう。
涼太 「その……手、繋いで帰る、か……?」
渚沙 「う、うん……」
そう言って、渚沙はそっと俺の手を繋いできた。俺は、その手を離さないようにぎゅっと握りしめる。
そうして、俺たちはのろのろと、手を離す時間を先延ばしにするようにしながら、家までの道を歩いて帰った。
(to be continued…)