学校について、みんなが教室に入ったのを確認してから、俺は渚沙に声をかけた。
涼太 「渚沙。ちょっと」
渚沙 「ど、どうしたのよ、突然」
涼太 「う、うん。実はちょっと大事な話があって……」
渚沙 「だ、大事な話!?」
なぜか渚沙は挙動不審だった。
俺も緊張していたはずなのに、自分より冷静じゃない渚沙を見て逆に俺は少し冷静になった。
涼太 「渚沙? もしかして具合が悪かったりするか?」
渚沙 「ぜ、全然!? 元気いっぱいよ! あはは、どうしたの? 変なリョータ」
変なのはおまえだ……。
が、今の渚沙にそれを言っても否定されるだけだろう。
渚沙 「そ、それで、なに? 大事な話って」
涼太 「ああ、うん。実は放課後に二人きりで会えないかと思って。話はそのときにしたいんだ」
結局、いい告白なんて思いつかなかった。だったら、うじうじ悩むよりも当たって砕けるべきだろう。
……いや、砕けちゃダメなんだけど。
渚沙 「きょ、今日……? それは、今日じゃなきゃ、ダメ……?」
涼太 「? なにか都合が悪かったか?」
渚沙 「う、ううん。実はあたしも、リョータに大事な話があって……」
涼太 「へ?」
渚沙が俺に大事な話。はて、なんだろうか。
涼太 「まあ、そういうことなら渚沙の方優先でいいぞ」
渚沙 「う、うん……。その……ううぅ……」
なぜか渚沙は顔を真っ赤にして固まってしまう。
涼太 「あるいは、渚沙の話の前に、俺から話しちゃってもいいし」
渚沙 「ダ、ダメ!」
涼太 「え、ダメ……?」
渚沙 「リョータの話はわかんないけど、あたし、今、いっぱいいっぱいなのよ……」
……それは見ればわかる。
渚沙 「なにか新情報が出てきたりしたら、決心が鈍っちゃうわ」
涼太 「……決心?」
渚沙 「と、とにかく、出来れば、その話は明日以降がいいな。……明日以降が、いいです」
涼太 「そっか」
渚沙がなにをしようとしているかわからないが、俺の話は別に今日じゃなきゃいけないという話ではない。
涼太 「それなら、今日は渚沙に付き合うってことで」
渚沙 「……う、うん。ありがと」
渚沙 「じゃ、じゃあ、また放課後に」
涼太 「おう」
そう答えると、渚沙は先に教室へと入っていった。
涼太 「……はぁ~。明日……明日かぁ」
渚沙のやりたいことを優先する、そう言葉にするとかっこいいが……。
実際のところ、俺は自分が勇気を振り絞らなきゃいけないイベントを後回しにしたいだけだった。
その証拠に、今日はまだ告白しなくていいとわかって、どこかほっとしている自分がいるのだから……。
祭 「終わったー」
涼太 「……お、今日の補習はもう終わりか」
泉実 「最近は無の境地に至って、気づくと一日が終わってるね」
星里奈 「……それはつまり、補習の内容は全然頭に入ってないということではないか? それでは意味がないぞ」
涼太 「青春ってのは、無駄なものなんだよ」
陽鞠 「……山に登らない陽鞠、それは果たして、本当に陽鞠だと呼べるんでしょうか?」
涼太 「おい、しっかりしろ。目の焦点があってないぞ……」
放課後、相変わらず俺たちは自分たちの席の周りで下らないことを言い合っていた。
渚沙 「リョ、リョータ……」
涼太 「う、うん……」
やはり、どこかに緊張をにじませた渚沙は耳元でささやいてきた。
渚沙 「こ、このあとは、また図書室で大丈夫?」
涼太 「ああ、もちろん」
渚沙 「あ、ありがと」
渚沙はなぜか顔を赤らめた。
図書館に行くのになんで照れることがあるんだろうか?
(to be continued…)